論文賞
ピリジン樹脂固定化ロジウム錯体触媒による酢酸製造プロセスの開発
米田 則行殿+1),皆見 武志殿,白戸 義美殿+2),安井 誠殿,
松本 忠士殿,細野 恭生殿(千代田化工建設(株))
メタノールのカルボニル化による酢酸合成において,ロジウム錯体の固定化が検討され,微水系反応を可能とすることで高い製品収率・生産効率およびプロセスのグリーン化が追求されている。本論文では,錯体固定化用担体であるピリジン樹脂に対し,工業的に要求される耐分解性,耐摩耗性について,学術面(架橋度と物性,活性,耐久性の関係など)からの丁寧な実験結果および考察が示されている。
すなわち,ビニルピリジン/ジビニルベンゼン(架橋剤)樹脂の架橋度を増加させることにより,樹脂がち密化して耐摩耗性および耐分解性は向上するが,平均細孔径が減少して活性が低下することを明らかにし,架橋度40〜60%が適していると結論している。かくはん槽型反応器による連続流通式反応装置を使用して,単流通式にて2000時間,生成物をフラッシュしたボトム液のリサイクル供給にて7000時間の安定運転データを得て,ロジウム錯体固定化触媒の性能を確認している。これらの評価試験を通して,ロジウム錯体が平衡的に生成物中に微量流出するが,これを添加あるいはリサイクルすることにより,長時間安定した触媒性能を発揮することを明らかとした。さらに,これらの成果をもとに商業プロセス構成と同様なパイロット装置(精製部,回収部を装備)で実証運転を行い,反応器空塔収量:11 mol/L・h,メタノールおよび一酸化炭素基準収率:99%,90%を実証している。
錯体触媒の固定化に関する基礎研究からプロセスの実証運転までの幅広いこれらの研究開発成果は,実装置建設,さらには同様な触媒・反応系の技術開発に大いに貢献するものと評価される。
以上の点から,本論文は本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。
[対象論文] J. Jpn. Petrol. Inst., 46,(4), 240(2003).
+1)(現在)万有製薬(株)
+2)(現在)ユーテックコンサルティング(株)
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