学会賞(表彰規程第3条2項に該当するもの)(工業的)
ゼオライト型水素化分解触媒プロセスの開発
岡崎 肇 殿(新日本石油(株) 中央技術研究所 副所長)
足立 倫明 殿(新日本石油(株) 新エネルギー本部FC事業2部 グループマネージャー)
壱岐 英 殿(新日本石油(株) 中央技術研究所)
自動車排ガス浄化のための自動車燃料の低硫黄化が強い社会的要求になっており,特に,ディーゼル自動車から排出される粒子状物質(PM)およびNOx 低減のための軽油のサルファーフリー化は強力に推進されている。 このような背景の中,高い水素圧力条件下で減圧軽油留分を分解し,主生成物として中間留分を製造する水素化分解装置は,得られる中間留分の硫黄分が低く,そのままでサルファーフリー軽油基材とすることができるため,石油精製におけるその役割が以前にも増して重要なものになってきていた。 このため,中間留分を増産でき,かつ長期間安定運転可能な改良された水素化分解触媒の開発が待望されていた。
水素化分解触媒には,アモルファス型とゼオライト型とが知られているが,アモルファス型は中間留分選択性が高い代わりに分解活性が低く,ゼオライト型は分解活性が高い代わりに中間留分選択性が低いという問題点があった。 すなわち,アモルファス型とゼオライト型の触媒においては,中間留分選択性と分解活性とがトレードオフの関係にあり,従来技術においては,中間留分選択性と分解活性の両方を高めることが困難であった。
これに対し,本開発触媒は,6配位Al量の少ないゼオライトを水素化分解触媒の構成成分として採用することにより,中間留分の二次分解を抑制して中間留分選択性をアモルファス型のレベルに維持しながら,分解率を従来のアモルファス型触媒に比べて約15%向上させることを可能にした。 また,本開発触媒を用いた実装置での高分解率運転を管理するためのシミュレーターを構築した。 それらの効果は,2年間の実操業運転において,期待どおりの増処理と中間留分増産を達成したことによって実証されている。 本開発触媒を用いた水素化分解装置は,高粘度指数潤滑油基油として利用できる未分解油を併産するという従来から有していた機能を維持しつつ,環境負荷を軽減した軽油の増産に寄与する効果を有している。 さらに,本開発触媒は,自社内外の製油所で採用され,順調に使用されている。 本開発技術は,パッケージ化された技術としての普及のポテンシャルを有している。
本開発において,高中間留分選択性と高分解活性とを両立させた水素化分解触媒用ゼオライトを選別するための指標を見出すとともに,それに基づく触媒を開発して実用に供し,経済的な環境負荷低減への寄与を実証している点は高く評価できるものであり,本会表彰規程第3条2項に該当するものと認められる。
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