技術進歩賞
液体炭化水素中の水銀除去技術
日揮株式会社殿
本技術は,近年,原油および天然ガスの生産プラント,石油精製および石油化学の製造プラントにおいて,経済性,安全性および環境問題等からその対応が迫られている水銀を吸着法でppbレベルに除去できる画期的な水銀除去プロセスである。さらに,水銀を含んだ廃吸着剤の処分までを含めた水銀除去に関する総合的な技術開発の実用化を行ったものである。
開発された本技術は「水銀の分析方法」,「単体水銀の吸着剤の開発」,「イオン状水銀および有機水銀を単体水銀に分解する方法」および「廃吸着剤処分技術の開発」の4項目で構成されている。
- 原油および天然ガスに含まれる水銀は,物性,吸着,反応特性が異なる「単体水銀」,「イオン状水銀」および「有機水銀」が多用な形態で含まれている。ここで確立した微量な水銀のタイプと濃度を精度良く分析できる水銀微量分析法は,プラントの設計や保証時の標準に採用されるとともに,水銀除去を可能にする吸着剤を見つけ出す重要な手段となっている。
- 一般的には,原油および天然ガスで最も含有量が多いのは単体水銀であり,これを除去するために,高比表面積を有するAl2O3担体にモリブデン系の硫化物を担持した高機能吸着剤(MR-3)を開発した。この吸着剤は,競合他社が使用している硫化銅と比較して水銀の吸着速度と吸着容量を大きくとれるため,吸着塔の小型化が可能となる。
- イオン状水銀および有機水銀を含む場合,従来技術は高温・高圧,水素雰囲気下でNi-Mo系触媒上で単体水銀に分解した後に吸着剤に吸着させるため,プロセスの操作性の煩雑さとプロセス全体のコスト増の要因となっていた。これに対し,本技術は従来の吸着剤では除去が困難であった160〜200℃でイオン状水銀および有機水銀を,水素を使用することなく吸着しやすい単体水銀に効率的に分解できる活性炭系触媒(MR-14)を開発した。水素を使用しない本技術は,水素源のない井戸元での原油/天然ガス処理に優れた経済性を有している。
- 水銀を高濃度に吸着した廃吸着剤の処分は環境問題面から容易でなく,地中への埋め立て基準をクリアできる処分技術がなかった。日揮(株)はポルトランドセメントと高炉スラグと混合した固化材を用いて,廃吸着剤の固化処理プロセスを開発した。この処理方法は,低コストで水銀の溶出がなく,半永久的に処理できる画期的な方法である。
現在,この水銀除去プロセスは国内7社,海外4社で既に商業実績を有している。今後,原料中の水銀除去は,環境面および安全面からのニーズがますます高まりつつあり,同社が開発した水銀除去・処分技術は,国内はもとより,海外でも石油や天然ガスを扱う分野において,大きく貢献することが期待できる。
以上の点から,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。
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