奨励賞(新日本石油賞)

格子酸素の移動を制御したペロブスカイト型金属酸化物を用いたメタンからの酸化的合成ガス製造

濱川 聡殿(産業技術総合研究所 メンブレン化学研究ラボ 主任研究員)

 濱川氏は,アニオン伝導酸化物固体電解質を低級炭化水素の部分酸化反応における活性酸素源として用いることにより反応選択性を高めることを報告し,メンブレンリアクターを用いた燃料電池型電気化学的酸化反応において先駆的な成果を挙げた。 特に,メタン酸化により合成ガスを生成する際の固体電解質触媒であるペロブスカイト型金属酸化物のカチオン成分を,イオン伝導計測を通して最適化するとともに,メタン酸化では長年の懸案事項であった炭素質の析出を抑えることにも成功した。

 具体的には, Ca0.8Sr0.2TiO3を電解質担体としてニッケルを担持した触媒において,チタン原子を鉄原子で置換すると合成ガス生成の活性が変化するとともに,炭素質析出が大きく変化し,置換率10%のときに炭素質の析出がほとんどなくなることを見出した。 アノード側のメタンを水素に変え,格子酸素との燃焼反応量を計測することにより,酸素アニオンの移動量を決定し,全伝導率に対する酸素アニオン伝導比(混合導電性)を調べた。 このように測定された酸素アニオン伝導比が置換率10%のとき,酸素浸透電流密度の理論的最大値を与える理論的酸素アニオン伝導比と一致することを見出し,炭素質析出が格子酸素の移動と一意対応することを示した。 このことにより,固体内を拡散した酸素種が析出炭素を燃焼し,炭素質析出・蓄積を抑止するという機構を明らかにし,炭素質析出防止メカニズムを展開した。 これらの成果は,石油化学プロセスおよび天然ガスの変換プロセスにおける炭素質析出の抑止手法として極めて有効である。

 以上の業績は,メンブレンリアクターを用いた電気化学的酸化反応の領域を大きく進展させたものと判断され,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。

 

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