奨励賞(コスモ石油賞)
新規チタノシリケートの調製およびその触媒反応への応用に関する研究
呉 鵬殿(横浜国立大学大学院工学研究院 助手)
呉氏は,各種有機化合物の過酸化水素による液相酸化反応において,水のみが副生するクリーンプロセスを可能にするチタンゼオライト系触媒の改良に顕著な業績を挙げた。すなわち,イタリアのEni社により開発されたチタノシリケートTS-1の活性と選択性を改良する意図で行われた研究において,Ti-MOR(モルデナイト構造)およびTi-MWW(MCM-22構造)の合成方法を確立し,これらが高い触媒活性と特異な選択性をもつことを明らかにした。特に,後者のTi-MWWの調製では,全く新規な調製法を開発し,Tiを骨格内に含むMWW構造のゼオライトの調製に成功したのは特筆すべきことである。
呉氏の業績を概観すると,以下のとおりである。すなわち,Ti-MORの調製については,脱アルミニウム化したモルデナイトに高温でTiCl4蒸気を接触させるアトムプランティング法を用い,骨格内へのTiの挿入に成功した。この触媒は種々の芳香族化合物の水酸化反応のみならず,ケトン類のアンモオキシム化においても高い触媒活性と生成物選択性を示した。
また,Ti-MWWの調製については,水熱合成時にホウ素を結晶化助剤として大量に加えることが鍵となっている新規な調製法を開発した。さらに,その後の研究で,ホウ素フリーなMWWを調製しておき,ここに後からTiを導入する新規ポスト合成法を提案している。この方法では,3次元ゼオライト構造と2次元の層構造の可逆的な変換原理に基づいて,任意の位置に大量のチタン種の導入が可能である。このTi-MWW触媒は,TS-1では困難であったかさ高いアルケンのエポキシ化を可能にし,また鎖状化合物中の二重結合の酸化においてはTS-1に比べて数倍高い活性を示す。さらに,この触媒がシスおよびトランスアルケンの幾何異性体のエポキシ化において,トランス体の酸化を特異的に促進することを認めた。
よって,これらの業績は石油化学工業における触媒の開発に多大な貢献をするもので,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。
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