論文賞

細孔分布が均一な多孔質触媒によるイソブタンの脱水素反応(第2報)Sn-Pt/ZnO/Al2O3系触媒の成分の役割

岡田 佳巳殿,今川 健一殿(千代田化工建設(株))
浅岡 佐知夫殿(北九州市立大学)

 Sn-Pt/ZnO触媒系に細孔分布がシャープに制御されたアルミナ担体を用いると,活性,選択性および寿命ともに優れたイソブタン脱水素触媒の調製が可能であることを前報(第1報)で示した。本研究では同一のアルミナ担体を用い,各触媒成分の添加量が活性,選択性,活性劣化速度に与える影響について検討し,各成分の役割について考察した。すなわちAl2O3担体,ZnO/Al2O3,Pt/ZnO/Al2O3,Sn-Pt/ZnO/Al2O3,Pt/Al2O3について活性・選択性の経時変化,各成分の添加量依存性を解析した。ZnO/Al2O3はPt/Al2O3と比較して約40倍の高い脱水素活性をもつが,同時に高い分解活性を有することが判明した。Ptの添加は,ZnO/Al2O3の脱水素活性を促進するとともに劣化を抑制する効果があり,Ptによる水素の逆スピルオーバー効果であると推察された。Snの添加は,PtとSnのバイメタルを形成するとともにZnO/Al2O3の分解活性点を被覆し,活性・選択性を向上させて劣化を抑制する顕著な効果がある。しかし,過剰なSnの添加はPtの添加効果を消失させるとともにZnO/Al2O3上の活性点を被毒すると考えられた。接触時間依存性から副反応(イソブテンの異性化と分解)の反応経路についても解明した。

 このように本論文では豊富な実験データから,各成分の最適添加量とその役割について検討を行っている。このことは,同様な反応において新規な実用触媒を開発する上で重要な指針を与えたものと評価できる。

 以上の点から,本論文は本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。

 

[対象論文] 石油学会誌44,(5),286 (2001).

 

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