奨励賞(エクソンモービル賞)
金属化合物コロイドを用いた担持金属触媒の微細構造制御とその応用に関する研究
岸田 昌浩殿(九州大学大学院工学研究院 助教授)
岸田氏は,石油化学工業や天然ガス工業の分野で重要な役割を担っている担持金属触媒の研究において卓越した業績を収めた。同氏は,担持金属触媒の調製法において,金属化合物コロイドを用いた全く新たな方法を考案し開発した。すなわち,金属イオンからコロイドを合成し,担体となる金属アルコキシドと反応させることにより,コロイドの凝集による粒子径の成長を抑制し,均一な粒子径をもつ金属触媒の調製に成功し,かつ触媒の微細構造制御法を確立するなど,多くの業績を挙げた。
岸田氏の主な研究業績は以下のとおりである。新規触媒調製法の研究においては,金属種として,Rh, Pt,Pd,Ir,Fe,Ni,また担体種としてSiO2,Al2O3,ZrO2について,前者の金属化合物コロイド上に後者の前駆体アルコキシド溶液から担体を成長させる全く新しい調製法を開発した。さらに,こうして合成したRh/SiO2についてマイクロエマルションのミセルサイズを変えることにより,Rh粒子径だけを1〜15 nmの範囲で制御できること,Rh粒子径一定でRh担持量を0.3〜10 wt%まで制御できること,Rh粒子径一定でBET比表面積を10〜1000 m2/gまで制御できることなどを示し,従来の触媒調製法では困難であった粒子径,担持量,比表面積という触媒の微細構造を独立して制御することに成功した。
また,本法で調製した触媒のCO,CO2水素化反応活性は従来法に比べて数10倍もの高活性を示し,これは金属粒子径の小ささやその分布がシャープであったためだけではなく,金属粒子の電子密度が従来法よりも低いことが関係していることを示した。さらに,メタンの水蒸気あるいは炭酸ガス改質反応において優れた耐炭素析出性を示すなど,実際の触媒反応において従来の触媒よりも格段に優れた特性を示した。
以上のような研究成果は全く新しい触媒調製法の考案と開発,それに実用触媒試験の実施という高い独創性から生まれたものである。よって,これら岸田氏の業績はエネルギーおよび環境分野での触媒開発に多大な寄与を与えるものであり,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。
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