論文賞
Fe, Sr添加LaGaO3系酸化物を酸素分離膜に用いた膜型反応器によるCH4部分酸化反応
石原 達己殿,鶴田 祐子殿*,戸高 利恒殿
西口 宏泰殿,滝田 祐作殿(大分大学)
資源として豊富に埋蔵されている天然ガスを合成ガスに転換し,さらに有用な液体燃料へ転換することは重要な課題である。スチームリフォーミングによる合成ガス製造が一般的に利用されているが,大きな吸熱反応のためエネルギーの投入量が大きくなりすぎるなどの問題点がある。そこで,発熱反応で合成ガスを得ることができるCH4の部分酸化反応(CH4 + 1/2O2 → CO + 2H2)が注目されている。このプロセスの実用化のために電子‐酸化物イオン混合伝導性セラミック膜を用いた酸素分離とCH4部分酸化反応との組合せが検討されている。しかし,現在までにCH4の部分酸化に応用可能な優れた安定性を有する混合伝導体は見い出されていない。
本研究では,SrおよびFeを添加したLaGaO3系酸化物からなるホール‐酸素イオン混合伝導体を酸素分離膜とするCH4の部分酸化反応について検討した。空気からAr中への酸素の透過速度の検討から,La0.7Sr0.3Ga0.6Fe0.4O3が最も大きな酸素の透過速度を示すことを見い出すとともに,CH4の部分酸化の条件下でも安定な酸素の透過が可能であり,CO/H2=1/2からなる合成ガスが収率40%という高い値で得られることを示した。この材料では厚さ0.5 mmの板を用いても1000℃で80 L/min・m2という従来になく大きな酸素の透過が可能であり,またCH4/airという大きな酸素分圧こう配下でもクラックを生ずることなく安定であることを明らかにした。このことは,新しいCH4のアップグレーディングプロセスの技術開発に重要な貢献をしたと評価される。
以上の点から,本論文は本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。
[対象論文] J. Jpn. Petrol. Inst.,45,(1),32 (2002).*(現在)三菱化学(株)
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