技術進歩賞

配管架台接触部の超音波表面波による腐食検査方法の開発と実用化

四辻 美年殿(出光エンジニアリング(株)技術部 主任部員)
広田 信明殿(非破壊検査(株)東京安全工学研究所 主任研究員)

 本技術は,配管の架台接触部における外面腐食の非破壊的検査法である。配管架台接触部では,雨水などの浸入で湿潤環境となりやすく,外面腐食を生じやすい。国内のプラントの多くは建設後長期間経過した設備が多く,設備の健全性確認のため外面腐食検査が必要になってきている。従来,架台接触部の配管外面腐食検査では,架台から配管を持ち上げて行う目視検査が必要であった。大口径配管では,配管を持ち上げるのが困難であり,検査に伴う付帯工事に多大な経費と時間を要していた。

 配管の腐食検査法は,従来法として目視検査,超音波(横波)法,放射線透過法などがある。目視検査や放射線透過法では,配管を架台から持ち上げることが必要である。また放射線透過法は,大口径配管や厚肉配管には適用できない。超音波(横波)法では,内面腐食も検出するため,外面腐食を正確に検出することができない。

 本技術は,超音波(表面波)を適用することにより腐食部と健全部の超音波伝搬時間差から架台接触部の配管を持ち上げることなく外面腐食だけを定量的に検出することを可能にしたものである。平成12年に特許出願も行われており,新規性・進歩性がある。平成9年に室内実験,平成10年にプラントでの実験が行われ,その後,検査精度の向上やコンピューターによる評価システム(画像処理化)を付加することにより検査能率の向上が行われている。

 また,本技術については本会保全分科会シンポジウム(平成13年)を始め,日本非破壊検査協会や配管技術誌など関連分野でも広く紹介されている。最近3年間で,石油プラントにおいて25事業所で採用されているほか,化学プラント,ガスプラント,電力プラントなどでも計21事業所で採用され,本技術の有用性が広く認められている。

 近年,長期連続運転化や自主保安の流れの中で,設備の信頼性確保を目的とした診断技術の開発がますます重要になっている。本技術は,このようなニーズにマッチしたものであり,設備の信頼性確保に寄与すると評価できる。

 以上の観点から,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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