野口記念奨励賞

光化学反応を利用する燃料油の新規な脱硫・脱窒素・脱メタル法の開発

平井 隆之殿(大阪大学太陽エネルギー化学研究センター 教授)
白石 康浩殿(大阪大学太陽エネルギー化学研究センター 助手)

 平井氏らは,燃料油中の含硫黄有機化合物・含窒素有機化合物・金属ポルフィリン化合物を光化学反応と液液抽出操作を組み合わせて取り除く新規な技術を考案した。本研究で考案した脱硫・脱窒素・脱メタル技術は,触媒や水素を必要としておらず,常温・常圧で操作が可能であるという利点を備えている。

 軽油/過酸化水素水溶液または軽油/アセトニトリルからなる液液抽出系に紫外光を照射して脱硫を試み,難脱硫性の4,6-ジメチルジベンゾチオフェンの光化学反応性が無置換ジベンゾチオフェンのそれより大きく,常温・常圧下での軽油の超深度脱硫(硫黄分50 ppm)の可能性を示した。このとき,含窒素化合物も光酸化され,脱硫と脱窒素が同時進行することも示した。さらに,光増感剤を導入することにより波長400 nm付近の可視光領域で可視光増感反応による超深度脱硫が可能であることを示した。また,接触分解ガソリンの脱硫が可能であることも示した。一方,常圧残油ならびに減圧残油に含まれるバナジウムポルフィリンおよびニッケルポルフィリン化合物を紫外光で分解し水溶液を用いる液液抽出によってこれら金属分の除去が可能であることを示した。

 以上のように平井氏らの提案した脱硫・脱窒素・脱メタル技術は新規な燃料油精製プロセスとして独創性・新規性を有するものであり,本会野口記念賞表彰規程第2条2項に該当するものと認められる。

 

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