技術進歩賞

既存ディーゼル自動車の粒子状物質排出を低減する軽質化軽油の開発

金子 タカシ殿(新日本石油(株)中央技術研究所 燃料油Gr. 参事)
秋本 淳殿(新日本石油(株)FC事業部FC研究Gr. 主事)
渡辺 裕朗殿(新日本石油(株)中央技術研究所 燃料油Gr. 主事)

 本技術は,排ガス後処理装置を装着していない既存ディーゼル車から排出される粒子状物質(PM)の低減を可能にした,即効性かつ実効の高い軽油の品質改良技術である。

 ディーゼル自動車から排出されるPMや窒素酸化物(NOx)などの有害物質の低減は社会的要請となっている。なかでも,健康影響が懸念されるPMに関しては,環境省中央環境審議会第4次答申,尼崎公害訴訟第一審判決,東京都環境確保条例等で示された通り,早急なPMの排出低減が求められている。このPMの本格的排出低減に向けては,排ガス後処理装置の装着などの車両側での対応策がとられた既存車や今後市場に導入される新車を対象とし,低硫黄軽油(S<50 ppm)の供給が開始されている。しかし,現在の都市環境や沿道域環境保全の面から,排ガス後処理装置の装着が困難な既存ディーゼル車への即効的な対応策が強く求められていた。

 本技術では,まず現行の軽油性状とディーゼル排ガス特性との詳細な検討から,蒸留90%留出温度の低温化(軽質化)がPM排出量の低減に有効であることを見い出した。次いで,軽質化による動粘度や密度の低下による燃焼特性への影響を最小限に抑えるカット温度や成分組成の最適化,セタン価向上剤や潤滑性向上剤の添加等により,現行の市販2号軽油に比べPMを約30%低減できる排ガス特性と実用性能を両立させた軽質化軽油の処方を最終的に完成させた。本技術により製造される軽質化軽油は,連産品である石油製品の需給バランスに影響を与えない範囲内での限定供給という制約はあるものの,現行の精製設備のもとで製造できる即効性の高い環境対応型の軽油である。

 本軽質化軽油は,実験用燃料として東京都(1997〜1998)と川崎市(1999〜2000)に提供され,既存車に対するPM低減効果(現行軽油に比べ約30%低減)が確認された。特に,本軽質化軽油は,排出ガス規制年度の古い車両,加減速を含む実走行モードにおいてPM低減効果が大きいことが確認された。信号待ちや渋滞の多い都市部からのPM低減に効果が大きいことは特筆すべき点である。さらに,2001年1月から川崎市で市バスやゴミ収集車を対象に市場導入されている。4月以降,川崎市においては公共機関の800台以上のディーゼル車に軽質化軽油が導入拡大され,都市大気環境の改善に貢献している。

 本技術による軽質化軽油の市場供給は,ディーゼル自動車への後処理装置の装着が普及されるまでの過渡的な対策と位置付けられるが,排ガス後処理装置を装着していない既存車からのPM低減対策として,燃料面から即効性かつ実効性の高い改善策を提供している意義は大きい。以上の観点から,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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