技術進歩賞

高温高圧下における低浸透性火山岩貯留層に対する多段階水圧破砕法の適用

帝国石油株式会社殿
石油公団殿

 近年,国内の油・ガス田開発は新潟県の南長岡・片貝ガス田,北海道の勇払ガス田等の深度5000 m程度の大深度火山岩貯留層を対象としたものが目立つ。対象深度が深くなるに従って,貯留層は高温高圧となり作業の困難さも増すことから坑井掘削費用は飛躍的に増加するため,坑井1本あたりの生産量が大きくないと経済的に見合わない。したがって,対象とする貯留層の生産性が低い場合には,たとえ油・ガスの埋蔵量が十分であっても開発に移行できない場合もあり,開発のためには生産性を改善することが必要となる。特に,火山岩貯留層では天然フラクチャー(き裂)が発達しており,その分布は一様でないことから場所により浸透性,生産性が異なることが多い。このため,従来のたい積岩貯留層と比べると,火山岩貯留層では天然フラクチャーの周辺に分布する浸透性の良くない部分に遭遇する可能性が高かった。このような場合に,坑井の生産性を改善するためには,坑井周辺の浸透性の良くない部分と,近くに存在するガスや油を含んだ高浸透性の天然フラクチャーの間に浸透性の良い通路を人工的に形成する必要がある。

 生産性を改善する技術としては酸処理法,水圧破砕法が一般的である。大深度火山岩貯留層に対する酸処理法は国内では勇払ガス田に対して適用されたことがあり,生産性改善の実績が得られている。一方,大深度火山岩貯留層に対する水圧破砕法は世界的にもあまり適用例がない。

 帝国石油 (株)/石油公団では,10年前に南長岡ガス田に対して水圧破砕法を適用し,計画通りの圧入はなされなかったものの生産性改善の実績が得られている。今回は前回の実績を踏まえて作業方法に幾つかの改良を施したが,中でも大きな改良点は多段階水圧破砕法を採用したことである。南長岡ガス田では対象とする貯留岩が数百メートルに及んでおり,前回の水圧破砕の時は最浅せん孔区間のみに水圧破砕法を適用したが,今回は対象区間を6区間に分割し,それぞれについて6 mのせん孔を施し各せん孔区間に対して水圧破砕を実施した。その結果ほぼ計画通りの圧入ができ,その後の生産試験の実績からみて,商用レベルで生産性を飛躍的に改善することができたと判断できる。

 本技術は他の大深度かつ対象区間の長い火山岩貯留層に対しても適用可能であり,応用技術としての価値は高く,今後,油・ガス田の開発対象としてその重要性が増すことが予想される大深度貯留層の経済的開発に大きく貢献するものと判断される。よって本研究は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

表彰平成13年度表彰受賞者一覧|ページへ