奨励賞(新日本石油精製賞)

新規ゼオライト系触媒材料の創製に関する研究

窪田 好浩殿(岐阜大学工学部 助教授)

 石油資源の有効利用のためには,より一層重質化が進行するであろう原油の軽質化と高付加価値物質への変換がかぎであり,これらの解決につながる革新的化学プロセスの構築が望まれる。これに寄与しうる重要な触媒材料の一つに大孔径高シリカゼオライトがある。大孔径ゼオライトの有用性は,現行の流動接触分解(FCC)プロセスの大部分でこの物質群が用いられているという事実からも明らかである。

 窪田氏は,大孔径高シリカゼオライト合成のかぎとなっている「有機テンプレート」(structure-directing agent; SDA)と生成ゼオライトの相関についての研究で顕著な業績を挙げ,新規ゼオライト系触媒材料の開発手法の基盤を築いた。

 窪田氏は,ゼオライトの合成時に四級アンモニウム型有機分子がテンプレートとして機能するための構造要因の解明を試み,テンプレート機能を発現するためには有機分子が適度な疎水性を有することが必要であることを示した。すなわち,疎水性の指標値がその分子のC/N+(炭素/アンモニウムイオン比)の関数で,テンプレート機能の発現に適した有機分子の組成はC/N+≦16であるという仮説を得,これが種々のゼオライト合成に適用可能であることを明らかにした。また,有機分子の炭素骨格形状やサイズが生成ゼオライト細孔の形状やサイズに反映されることを示した。

 窪田氏の特筆すべき成果は,上記の仮説に基づいて設計・合成した独自のテンプレート分子を用いて,新規骨格構造を有する大孔径高シリカゼオライトGUS-1 (Gifu University Molecular Sieve No. 1)の合成に成功したことであり,テンプレートの適切な選択が新規ゼオライトの創製につながることを実証した。さらに,テンプレート・シリケート間の相互作用がテンプレート構造に依存し,結果としてゼオライトの積層構造や粒子形態が変化することを見い出し,触媒調製時の粒子形態制御に関して有用な知見を得た。

 以上の研究業績は,石油精製と石油化学工業における触媒開発に直接つながり,今後革新的環境調和触媒プロセスの開発への途をひらく研究成果として高く評価でき,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。

表彰平成13年度表彰受賞者一覧|ページへ