技術進歩賞

情報通信機器用焼結含油軸受含浸油の開発と実用化

清木 啓通殿(出光興産(株)営業研究所 主任)
上村 秀人殿(出光興産(株)営業研究所 研究員)

 今日の高度情報化社会は,情報通信機器の発展と普及によりもたらされたといえる。さらに,これら機器の要素である小型モーターの低価格化と高性能化の達成は,高性能の焼結含油軸受含浸油によるといっても過言ではない。焼結含油軸受の欠点は,転がり軸受や動圧軸受よりも電力特性や回転精度,耐久性などの性能で劣っていた。しかし,専用潤滑油の開発により,回転精度の向上や高速回転対応,長寿命化などの諸特性を改善し,信頼性が高く低価格で高性能な軸受が実現した。

 その結果,1996年から12倍速以上のCD-ROMへ使用され,現在年間約2億台ともいわれる光ディスクドライブのほとんど全てに専用油が適用されている。

 本開発技術の特長は以下の点にある。

(1) ポリαオレフィンとアルキルナフタレンの混合基油に直鎖ハイドロジェンフォスファイトを配合することで,キャプスタンモーターの電池寿命を約2倍に延長することができ,携帯電子機器の発展および普及に貢献した。
(2) 直鎖ハイドロジェンフォスファイトとアミン系酸化防止剤を組み合わせることで,油膜強度の低下と基油の酸化分解・損失を抑制できることを見い出し,マルチメディア社会に不可欠な高倍速光ディスクドライブの低価格および高性能化に貢献した。
(3) 直鎖ハイドロジェンフォスファイトとアルミニウムステアレートを組み合わせることで,油膜を長時間維持できる特性を見い出し,CD-R/RW,DVD-RAMドライブの寿命をCD-ROMドライブの約2倍に延長することができ,高級情報機器向けドライブの信頼性向上に貢献した。
(4) 開発された各種焼結含油軸受含浸油は,多くの焼結含油軸受に使用され,省資源・省エネルギー,小型化,低コスト化に多大な貢献を果たし,その結果,消費者ニーズにかなった最終製品を供給できるようになった。

 今後,焼結含油軸受は中逃げ型含油軸受,動圧型含油軸受へと進化していくと考えられるが,本技術は流体動圧軸受への適用も可能と判断される。

 以上のように,低価格で高性能な焼結含油軸受を提供できる焼結含油軸受含浸油は,多大の市場実績を挙げており,今後の情報化社会の発展・普及に大きく貢献でき,本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。 

 

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