学会賞(表彰規程第3条2項に該当するもの)(工業的)

ハイドロフルオロカーボン冷媒対応冷凍機油の開発と実用化

出光興産株式会社殿

 1987年の「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」に基づき,クロロフルオロカーボン(CFC),ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の生産・消費規制が進められている。これらの代替として開発されたハイドロフルオロカーボン(HFC)は従来の鉱油系冷凍機油と相溶し難いため,新たな冷凍機油の開発が求められた。特に,本開発のターゲットとなった空調用冷凍機油分野では,適度な粘性,新規冷媒との相溶性,加水分解安定性,および電気絶縁性などの特性が必要である。
このような状況下,出光興産(株)は,主鎖にC-C結合,側鎖にエーテル結合を有する新たな構造のポリビニルエーテル(PVE)を開発し,その工業的製造技術を確立した。その技術の特徴は以下のとおりである。

(1) 電気絶縁性
主鎖にC-C結合を選定することにより,電気絶縁性を確保できる。
(2) 粘度の調整
モノマー(アルキルビニルエーテル)/開始剤比を変えることによって,重合度を調整することが可能であり,製品の粘性調整が容易である。
(3) 冷媒との相溶性
モノマーであるエチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルの比率を変えることにより,冷媒との相溶性を自由に調整できる。
(4) 耐加水分解性
構造的に加水分解しにくい。

 同社は,目的とする化合物を得るため,工業的なリビングカチオン重合法を完成させ,3件の特許を取得した。さらには,PVEを基油として使用して,製品として冷凍機油に必要な添加剤配合技術を確立した。このPVE系冷凍機油は空調用として十分満足な性能を有し,海外を含め8社に採用されており,平成13年度の販売数量は1200 klで,国内では家庭用エアコンで20%,業務用で60%のシェアになることが見込まれている。よって,本会表彰規程第3条2項に該当するものと認められる。

 

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