論文賞

希土類修飾HZSM-5触媒によるn-ブタンの接触分解反応

涌井顕一殿*1),佐藤浩一殿*2),澤田悟郎殿*3),
塩沢光治殿*4),又野孝一殿*5)((社)日本化学工業協会)
鈴木邦夫殿*6),早川 孝殿*6),村田和久殿*6),
葭村雄二殿*6),水上富士夫*6)殿(物質工学工業技術研究所)

 現行の石油化学工業においてオレフィンはナフサのスチームクラッキングによって製造されている。しかし,この方法は50%程度のオレフィン収率を得るための反応温度が800℃以上と高く,エネルギー多消費型プロセスの一つになっている。このため,環境調和型の新省エネルギープロセスの開発が強く望まれている。本研究では,接触分解反応のオレフィン収率の向上と低温化を目指してゼオライト系触媒の検討を行っている。

 涌井氏らは,接触分解のモデル反応としてn-ブタンのクラッキングを取り上げ,種々の触媒修飾法の開発,そのキャラクタリゼーションを実施した。その結果,HZSM-5自身は高い接触分解活性を示すが,芳香族が多量に副生し,オレフィンの選択性が低いこと,これにLa,Ce,Pr,Sm等の希土類イオンをイオン交換容量以上担持すると芳香族の生成が著しく抑制され,エチレン,プロピレンの収率が向上することを見い出した。また,希土類/HZSM-5触媒をスチーム処理するとさらに芳香族生成を抑制できることも明らかにした。これらの触媒は長時間使用により徐々に活性が低下するが,Pの添加により活性低下を抑制できることも見い出している。これらの触媒探索によって反応温度650℃,オレフィン収率52%を達成している。

 さらに,SiCl4処理による外表面酸点の不活性化,アンモニアの昇温脱離,二酸化炭素の昇温脱離等の手法を駆使して,希土類の水酸基および表面の塩基性が芳香族生成を抑制していることを推定している。

 以上の点から,本論文は本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。

 

[対象論文]石油誌,42,(5),307(1999)

(現在)
*1)出光石油化学(株)
*2)日本石油化学(株)
*3)丸善石油化学(株)
*4)元東燃化学(株)
*5) 東燃化学(株)
*6)産業技術総合研究所

 

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