奨励賞

水素分離用担持金属膜の開発と非Pd系への展開

上宮 成之殿(岐阜大学工学部 助教授)

 上宮氏は,水素を選択的に透過分離可能な各種担持金属膜の開発,およびこの水素透過膜と触媒反応とを結び付けたメンブレンリアクターの研究を精力的に行い,業績を挙げてきた。同氏が研究対象とした水素透過膜の実用化は,近未来の脱水素反応や改質反応などの石油化学プロセスの高効率化に大きく寄与することが考えられ,そのインパクトは極めて大きい。

 上宮氏の研究業績の中で特に優れている点は,貴金属系水素透過膜の新規調製法を考案し,これまで報告されていた水素透過能を大幅に改善した点を挙げることができる。

 具体的な業績として,(1)上宮氏は無電解めっき法によりパラジウムおよびパラジウム−銀合金を無機多孔体上に薄膜状に担持する調製法を開発し,水素透過膜として機能することを実証した。(2)この水素透過膜を用いたメンブレンリアクターを作製し,水性ガスシフト反応,メタンの水蒸気改質反応,あるいはプロパンの芳香族化において有効であることを実証した。(3)同氏は化学気相蒸着法(CVD)によるパラジウム担持無機多孔体膜の調製法について詳細に検討し,パラジウム使用量を大幅に削減しつつ高透過速度・高選択的な水素透過膜を開発した。(4)このCVD法を用いると,従来水素透過膜の対象とはならなかった白金,ルテニウム,ロジウム,イリジウムを担持した無機多孔体膜も良好な水素透過膜として機能することを見い出した。(5)CVD法で調製した貴金属担持無機多孔体膜の水素透過機構について詳細に検討し,従来型のパラジウム水素透過膜で提唱されている溶解−拡散機構ではなく,金属表面拡散機構であることを提案している。

 以上の研究業績は,近未来の石油化学工業における高効率プロセス開発の基礎研究として多大な貢献をするものであり,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。

 

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