【奨励賞】(工業部門)
油入変圧器内の油/プレスボード複合絶縁系における気泡性部分放電特性およびバリア放電特性の解明
吉田 成是 殿(三菱電機(株)先端技術総合研究所)
人工知能(AI)の急速な進化と普及により,大規模データセンターの建設が世界的に急増しており,日本国内においても電力需要が継続的に増加している。増加する電力需要に対応するため送配電システムの強化が急務となっているが,変電所の主要機器の一つである電力用油入変圧器については,設備の需要が供給能力を上回っている状況にあり,製造リードタイムの短縮による供給能力の強化が求められている。電力用油入変圧器で採用されている絶縁油とプレスボード等による絶縁システム(油/プレスボード複合絶縁系)には高い絶縁信頼性が求められ,部分放電が発生した場合にはその原因の特定と有害性の判断が重要となる。また,新設変圧器に対しては小型化と大容量化が求められており,電界集中部位での放電特性の把握が必要である。
吉田氏は,油入変圧器内部での部分放電の起点となる絶縁油中の気泡が,電界の大きさに応じて様々な形態に動的に変化することを見出し,気泡挙動と部分放電位相特性の関係を明らかにした。これにより,絶縁物であるプレスボードが損傷に至る放電エネルギーを推定することが可能となった。また,油入変圧器を模擬した油/プレスボード複合絶縁系において,有限要素法による汎用マルチフィジックスシミュレーションソフトを用いたバリア放電シミュレーションを行い,要素実験とシミュレーションを比較検証するという先進的な手法によりバリア放電進展特性を解明することにも成功した。さらに,電力用油入変圧器に現在広く用いられている鉱油系電気絶縁油にとどまらず,環境への配慮などから今後適用が広がると思われる生分解性電気絶縁油にも検討を広げ,両者の絶縁破壊特性を体系的に取得,整理し知見を深めた。
以上のように吉田氏は,最新のデジタル計測・シミュレーション技術も活用した検討により,油/プレスボード複合絶縁系における部分放電特性およびバリア放電特性を解明した。これらの成果は,電力用油入変圧器の絶縁信頼性を担保するために実施される耐電圧試験における部分放電源の推定およびその有害性の定量評価や,絶縁設計の合理化に資する重要な知見を含むものであり,油入変圧器の試験や設計の最適化および効率化に貢献するものであると判断される。よって,本会表彰規程第12条2項に該当するものと認められる。
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