論文賞
カリウム添加炭化鉄触媒を用いたCO2フィッシャー・トロプシュ合成における液体炭化水素収率の向上
柳田 晃秀 殿*1 , 古屋 伸悟 殿*2 , 堀越 大暉 殿*3 , 田代 啓悟 殿*4, 里川 重夫 殿
(成蹊大学)
(成蹊大学)
将来のカーボンニュートラル社会実現に向けてCO2の利活用は非常に重要であり,フィッシャー・トロプシュ合成はCO2と水素から炭化水素を得る手段として数多く研究されている。多くの研究事例では主要な結晶相である四酸化三鉄とFe5C2が活性点として働く鉄系触媒を用い,カリウムなどのアルカリ金属で促進される。その促進効果は,C1からC4の気体の生成抑制とC5+等の液体炭化水素の収率向上であり,単相のFe5C2の反応性とアルカリ促進剤の効果を理解することが重要であるが,副反応の発生や反応経路の選択性などはこれまでに広く議論されることも解明されることも多くなかった。特に,触媒表面に過剰なカリウムが凝集すると触媒活性の低下を招く懸念もあるといった触媒開発上での課題もあった。
本論文では,カリウム添加の触媒活性への影響を明らかにするべくいくつかの炭化鉄触媒を調製し,カリウム含有量,Fe5C2相の純度,およびCO2を原料とするフィッシャー・トロプシュ合成生成物の関係の調査として,ワンパス反応における液体炭化水素の収率を最大化する検討をまとめている。Fe5C2相を含む炭化鉄触媒(FeCx)は,シュウ酸鉄二水和物をCOガス雰囲気下で熱処理することで調製し,K(1)-FeCx(Fe:K = 100:1,モル比)において最も高いFe5C2相を有する触媒が得られることを示した。また,K(1)を用いた場合のC5+等の収率は,カリウムを含まない触媒の約1.4倍の19.8 %と優れた触媒性能を確認している。さらに,触媒表面への少量のカリウム添加によりC5+等の生成量が増加し,反応生成物中のCH4生成の抑制を観察した。一方,過剰なカリウム添加は活性点を覆い,活性低下とカルボン酸の副生増加を招いた。これらのことから,本論文では,炭化鉄に対するカリウムの適切な比率でのCH4選択率の劇的な低下と有用なC5+の収率向上を見出しており,実用化という観点から評価できる成果である。特にカリウム添加量と炭化鉄種の関係調査に関して有用である。
以上のように,本研究で得られた実験データは,CO2を直接原料として用いるフィッシャー・トロプシュ合成を実現する触媒の構造や反応など重要な知見を含んでおり,今後の触媒の設計や開発に大いに寄与する成果である。よって,本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。
[対象論文] J. Jpn. Petrol. Inst., 67, (4), 136 (2024).
(現所属) *1 住友金属鉱山(株),*2 (株)マツボー,*3 田中貴金属工業(株),*4 静岡大学
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