論文賞

固相転換法によるMFIゼオライト内包金属微粒子触媒の開発と 有用化学物質生成のためのエタン脱水素芳香族化

 

遠藤 海咲 殿1), 中谷 のどか 殿1), 叶 家楠 殿1),藤墳 大裕 殿2), 木村健太郎 殿1), 多湖 輝興 殿1)
(東京工業大学1)※,京都大学2)

 ゼオライトは,固体酸活性や形状選択性,水熱安定性,炭化水素吸着能といった優れた触媒特性を有することから,石油化学分野やファインケミカル等の合成分野で工業触媒として広く利用されている。さらに,ゼオライトは非常に大きな比表面積を有しており,水素化および脱水素プロセスで使用されるPtやPdなどの貴金属触媒の担体として使用されている。従来の含浸法で調製されるゼオライト担持触媒中の貴金属微粒子は,550 ℃を超える温度で容易に凝集し,失活する。そのため,高温反応には凝集に耐性のある触媒の開発が課題であった。
 本論文の著者らは,含浸法によりPtを担持したMFIゼオライト(Pt/MFI, Pt粒子径≒4.5 nm)上にアモルファスシリカアルミナ層を形成し,それを固相転換することによりゼオライトに内包されたPt微粒子触媒を調製した(Pt@MFI, Pt粒子径≒4.0 nm)。Pt/MFIはトルエン(TOL)と1,3,5-トリメチルベンゼン(TMB)の水素化に対して同等の活性を示したのに対し,Pt@MFIはTOLを効率的に水素化したが,TMB はほとんど水素化しなかった。よって,芳香族水素化反応において,Pt@MFIはゼオライト細孔サイズに起因する形状選択性を示し,Pt微粒子がゼオライトに内包されていることが示唆された。続いて,700 ℃で実施したエタンの脱水素反応においてPt@MFIとPt/MFIの活性を比較した結果,Pt@MFIはPt/MFIよりも高い脱水素活性を示した。これはPt@MFIの内包構造によりPt の凝集が物理的に抑制されたためであると考えられた。よって,Pt微粒子がゼオライトに内包されたPt@MFIは,優れた凝集耐性と芳香族に対する形状選択性を示すことを見出した。
 以上のように,本研究で得られた知見は,固相転換法を用いて合成したゼオライト内包金属微粒子触媒の優位性を明示しており,今後の担持微粒子金属触媒の設計や開発に大いに寄与する成果であり,本研究分野における大きな貢献と言える。よって,本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。

[対象論文] J. Jpn. Petrol. Inst., 67, (5), 158 (2024).
※現・東京科学大学

 

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