論文賞

屋外貯蔵半炭化バイオマスペレットの発熱挙動と管理

 

岡庭 健斗 殿, 園山 希 殿(出光興産(株))

 半炭化バイオマスペレット(Torrefied Biomass Pellets: TBP)は,木質バイオマスを加熱し,炭化物(木炭)となる過程の途中で加熱を停止することにより,粉砕性を向上しつつ重量収率の低下を抑制したものである。TBPは既存の石炭火力発電での大幅な混焼率向上が期待できることから,石炭火力発電における燃料の脱炭素化を実現する上で,その活用が有望視されている。その一方で,TBPは貯蔵時に自然発熱することが指摘されている。以上の背景から,TBPを実際に燃料として活用していく上で,その貯蔵指針の策定は重要な課題であり,これを達成するためにはTBPの自然発熱特性および発熱挙動を把握することが重要である。
 著者らは本研究において,約1500tのTBPの屋外貯蔵試験を行い,TBPパイルの温度変化を測定した。また,疑似断熱式自然発熱測定装置(Spontaneous Ignition Tester: SIT)により,TBP,れき青炭および亜れき青炭の自然発熱特性を評価・比較した。
 TBPパイルの屋外貯蔵試験では,約15日間で293Kから313Kまで上昇する地点があり,屋外における大量貯蔵時に実際に発熱しやすいことが確認された。貯蔵時には定点観測でパイル全体の温度レベルを把握しつつ,目視による発熱部位の監視,および粒径分布の違いによる通気性の違いなどを考慮した対策を策定することが有効であることを見い出した。
 また,SIT計測により得られたTBPの発熱曲線に対して,比表面積による補正を加えることにより,亜れき青炭に近い発熱性を有することを明らかにした。さらに,SITにより得られた活性化エネルギーを用い,屋外貯蔵時の最も昇温速度が大きい地点の昇温曲線を再現することができた。
 以上のように,著者らは大規模な貯蔵試験を実施するとともに,SITによる計測から得られるデータの有用性,貯蔵時のハンドリングに関する示唆を与えており,本論文は実用性が高く有益なものと考えられる。よって,本論文は本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。

[対象論文] J. Jpn. Petrol. Inst., 67, (1), 36 (2024).

 

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