論文賞
アルミナ担持白金触媒を用いたメタンと一酸化窒素によるシアン化水素合成における粒子径効果
山ア 達也 殿1),*5) , 高垣 敦 殿1),*6) , 宍戸 哲也 殿2),3) , 阪東 恭子 殿4), 小平 哲也 殿4),
村上 純一 殿4), Jun Tae SONG 殿1), 丹羽 栄貴 殿1),*7) , 渡邊 源規 殿1), 石原 達己 殿1)
(1)九州大学,2)東京都立大学,3)京都大学-ESICB,4)産業技術総合研究所)
村上 純一 殿4), Jun Tae SONG 殿1), 丹羽 栄貴 殿1),*7) , 渡邊 源規 殿1), 石原 達己 殿1)
(1)九州大学,2)東京都立大学,3)京都大学-ESICB,4)産業技術総合研究所)
近年,シェールガス革命により天然ガスの採掘量が増加している。その主成分であるメタンを高付加価値物質に変換する工業プロセスの重要性が高まっている。メタンから製造できるシアン化水素には,薬や殺虫剤をはじめとする多様な用途が見込まれる。また,シアン化水素は工業用の中間体としても重要であり,ナイロンの製造に用いる前駆体物質の合成でも使用されている。工業的なシアン化水素の製造法として,アンドルソフ法やBMA法が知られている。前者ではメタン,アンモニア,酸素から,後者ではメタンとアンモニアから,白金(Pt)触媒を用いてシアン化水素が得られる。これらの製造法では1000 ℃以上の高温が必要であり,より温和な反応条件下でのシアン化水素合成のための触媒開発が課題であった。
本論文の著者らは,白金担持アルミナ触媒(Pt/Al2O3)上で,一酸化窒素を酸化剤としてメタンをシアン化水素に300〜425 ℃程度の温度域で効率良く変換することに成功している。しかし,反応機構の検討は十分ではなかった。本論文で著者らは,白金担持量と焼成温度を制御することで1.6〜4.1 nmの範囲で様々な平均粒子径のPtを含むPt/Al2O3を調製し,一酸化窒素とメタンからのシアン化水素合成におけるPtナノ粒子の粒径効果についての詳細な検討を行っている。Pt粒子径の大きい触媒(4.0〜4.1 nm)において,400 ℃で収率1.3 %(炭素ベース)で高いシアン化水素の選択率(53.5 %)を達成した。
大きなPt粒子が優れた触媒性能を示す理由の一つとして,金属と担体の界面で進行するシアン化水素から二酸化炭素とアンモニアへの逐次的な分解反応が抑制されていることを示した。さらに,Pt L3端でのX線吸収微細構造(XAFS)測定から,反応試験後にPt粒子径の小さい触媒はPt-CN種で覆われていることを見出した。一方,Pt粒子径の大きい触媒ではPt-CO種が主な吸着種として観測され,大粒子触媒の方がシアン化水素の脱離が容易であることを明らかにした。これらの結果から,粒子径の大きいPt/Al2O3が一酸化窒素とメタンからのシアン化水素合成反応において有望な触媒であると結論づけた。
以上のように,本論文で得られた知見は,メタンからシアン化水素への変換反応の機構に関する重要な知見を与え今後の触媒の設計・開発に寄与する成果であり,本研究分野における大きな貢献と言える。よって,本論文は本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。
[対象論文] J. Jpn. Petrol. Inst., 65, (5), 184 (2022).
(現在) *5) 旭化成(株),*6) 横浜国立大学,*7) 弘前大学
|表彰|2023年度表彰受賞者一覧|ページへ |