技術進歩賞

数理最適化による大規模プロセスの迅速なプラント省エネ化支援技術の開発

 

高瀬 洋志 殿(東洋エンジニアリング(株)先進技術推進部HERO担当チーフ)
若林 敏祐 殿(東洋エンジニアリング(株)先進技術推進部長)
大友 陽平 殿(東洋エンジニアリング(株)先進技術推進部プロセスエンジニア)
大内 翔 殿(東洋エンジニアリング(株)先進技術推進部プロセスエンジニア)

 本事例では,プロセスプラント全体の大規模モデルに対してプロセス系・用役系を同時に省エネ・最適化を効率的に実現できる解析技術が開発された。これまで一部のプロセス系統や用役系統に絞った最適化モデルはピンチ解析を始め多く提案されてきたが,プロセス系・用役系の最適化は汎用ツールでは同時に検討することができず,特殊な技能を有するプロセスエンジニアが時間をかけて対応してきた。またその場合においても,様々な改善策を網羅的に検討することは難しかったが,この解析技術を活用することで,網羅的かつ迅速に属人性なく最適化検討を行えるようになった。
 特に本事例では,プラント全体の最適化を行うために機械的改造や機器構成変更のハードな検討のみでなく,用役の運転条件の変更や制御パラメーターの変更といったソフトの検討も同時に検討できるようになっている。局所最適解の提案でなく,上記のハード面・ソフト面両方の観点も踏まえて全体の最適化に繋げることは,これまでの技術では特に難しい点であった。また,今回利用した数理最適化モデルの活用においても,実際のプラントに適用するには,数理最適化手法の特性を理解した上で,適用するプラントの特性も理解し,現実的な計算量と実挙動に合う数理モデル構築をする必要がある。この点も,数多くのプラント設計を実施してきた実績に基づく知見を有効活用し,他社ではなかなか実現できない技術まで磨き上げている。
 実績面では,既に国内・海外においても省エネルギー検討を実施した実績も有しており,この技術の有用性が証明されている。長年,省エネの取り組みを行ってきたプラントであっても,本技術の検討結果から10 %以上のエネルギー削減量を導き出している。またプラントの対象が違った場合でも,同様な効果を示していることは特筆すべきことである。このようなプラントの大規模モデルに活用した事例は貴重であり,石油精製分野に限らず多くのプロセスプラントに活用できる有望な技術である。今後はCO2排出量もライフサイクル全体で計算し,削減していかなければならない状況の中で,以前と比較して継続的にCO2排出量を削減できる施策として大きな期待が持てる。
 以上の成果は,今後の石油精製や石油化学業界の低炭素化,省エネの更なる実現に大いに寄与するものと期待できる。よって,本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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