奨励賞(工業部門)

現地ニーズに則した石油随伴水処理技術と油性廃棄物の減量化処理技術の開発

 

小島 啓輔 殿(清水建設(株)技術研究所 主任研究員)

 近年,石油増進回収(EOR)技術の適用が進み,ケミカル圧入法,特に増粘剤(ポリマー)を溶解させた随伴水の再注入法が適用されることによって,石油随伴水の水質に変化が現れ,従来の処理方法では対応が困難になってきている。小島氏は,自ら産油国オマーンに赴き現地研究者と協働し,水質変化した随伴水に対する凝集原理を細かに検討し,また脱塩処理によって発生する濃縮水を有効利用することによって,以下の成果を挙げることに成功した。
 まず,凝集浮上分離で従来採用していたPAC(ポリ塩化アルミニウム)から硫酸バンド(硫酸アルミニウム)に置き換え,高分子凝集剤も再選定してその比率を調整することで,水質変化した随伴水を良好に処理できることを見出した。この技術をシステムに組み込むことにより「簡易で汎用的な処理技術」という現地のニーズを満足する石油随伴水の処理を可能とした。
 次に,石油随伴水を脱塩処理した際に発生する濃縮水を処理原水に注入することで,エマルジョン化していた油の分散が促進されること,およびEOR用の増粘剤(ポリマー)成分と反応して随伴水の粘度が低下することを見出し,処理に必要な凝集剤の添加量が削減できる可能性を示した。脱塩処理によって発生する濃縮水を有効利用することが,随伴水の処理コストの削減につながるという非常に独創的な技術であると考えられる。
 上述のコア技術に加え,オイルスラッジの効率的なバッチ式炭化処理を統合した「グリーンファーム構想」の提案は,オマーンを含む他の産油国に対しても,新たな水資源の確保,および新規産業創出を意図した適用が期待される。高い運転技術を必要としない随伴水処理システムと廃棄物処理/利用システムを組み合わせることによって,従来の単なる廃棄物処理に加え,灌漑/藻類培養システムを関係づけた新しい地産地消型のインフラ設備拡充の実現に大いに寄与するものである。よって,本会表彰規程第12条2項に該当するものと認められる。

 

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