平成14年度経営情報部会WG1活動成果報告

WG1 携帯端末の最新技術の動向調査−石油産業への適応可能性を探る−

参加メンバー: 生田誠司(山武産業システム),市毛弘宣(出光興産),大塚 智(横河電機),岡 文一(東洋エンジニアリング),桜井国幸(日揮),渋井謙司郎(コスモ石油),難波乗安(昭和シェル石油),米山 徹(千代田化工建設)(以上,8名)

*メンバーの所属および下記成果報告書は2003年3月現在のものです。

1. はじめに

 経営情報部会WG1においては平成13年度に引き続き、「携帯端末の最新技術の動向調査」をテーマとして調査を継続した。今年度は高速道路料金所などで利用開始されたDSRC(dedicated short range communication: 専用狭域通信)技術、平成13年度に注目した近距離ワイヤレス通信規格”Bluetooth”の実情と動向、および市販テストキットを利用してその通信性能を実際に確認した。Bluetooth技術の適用状況はアプリケーションの決め手がない、チップの低価格化が進まないなどのマイナス材料があるものの手軽なワイヤレス通信技術の特徴を生かしてPDA(personal digital assistance)、ホームネットワークに適用される傾向にある。調査検討の詳細はページ数の関係で割愛させて頂く。

2. DSRC技術

 DSRCは双方向通信の5.8 GHz帯のアクティブ方式を採用した通信方式であり,現状実用化の段階で、数m〜30 mの限定されたスポットにおいて最大4 Mbpsの転送速度で双方向通信を行うことができる。車載器と路側発信機がどちらも電波を発信しあうので、路側発信機のみが電波を発信し車側は来た電波を反射するパッシブ方式に比べて、送受信情報量が多く、セキュリティレベルも高い。
DSRC技術の適用として、自動料金収受システム(ETC)の技術を応用した多機能通信システムがあり、今後ドライブスルー型店舗、サービスステーション、駐車場、コンビニエンスストア、物流管理等の様々な分野への応用が期待されている。ITS(intelligent transport systems)情報通信サービスの分野でDSRCサービスが市場を形成した場合、2015年度までの累計でITS情報通信サービス市場全体の約4割を占めると予想される。

3. Bluetooth性能確認実験

 石油業界での利用可能性を検討する際に参考となるように、Bluetooth通信の有効距離、安定性の調査を、市販テストキットを用いて実施した。今回の調査では、次の2項目について調査を実施した。一つは固定対固定の通信テストで、データ通信の限界距離を調べた。二つ目は固定対移動の通信テストで、移動しながらのデータ送受信の実現と、移動によるデータの損失等について調査した。テスト環境内には100台近くのPC等のOA機器、社員が携帯しているPHS・携帯電話などがあり、反射物(壁、天井)はあるが、柱や背の高い機器等の遮蔽(しゃへい)物が少ない環境で一般的なオフィスであると考えられる。このような環境でも、調査項目に対してほぼ出力仕様通りの結果が得られることが確認できた。

4. Bluetooth技術の実情と動向

Bluetooth技術が当初予想されたほど普及していない理由としては、

  1. 携帯電話でのハンズフリー通話や、次世代携帯の高速パケット通信をBluetoothでPCと接続し高速通信するなどが想定されていたが、携帯電話への実装が通信業界の事情により遅れている。
  2. ハード面では、Bluetoothのチップの価格がまだ十分に下がっていない。2002年末時点で10ドル弱の値段になっている。より一層の普及のためにはさらなる低価格化が必要と考える。またチップセットの1チップ化の方向は着実に進んできたが、RF(radio frequency)トランシーバー回路、ベースバンド回路、マイクロコントローラーおよびファームウェアー書き込み用ROMまでを1チップ化した製品がようやく製品化され始めたところである。
  3. ソフト面では、キラーアプリケーションと呼べるものがまだ出てきていない。一方、Bluetoothと対比される無線LANは、ADSLの普及に伴い家庭内での需要の増加、ホットスポットでの需要が後押しになり普及が進んでいる。

Bluetoothの今後については以下のような傾向が予測されており、普及していくことは間違いないと考える。

  1. 最近の市場調査報告によると、Bluetoothのサポートが今後の売れ行きのカギを握るとみており、特に西ヨーロッパ地域では、非対応機の売れ行きが2002年内にも落ち込みだすとの見解を示した。Bluetooth に対応することで、同じく Bluetooth 対応の携帯電話を PDA 製品のモデムとして利用できることから、ヨーロッパ地域では Bluetooth への注目が集まっている。多くの調査レポートで明らかになっている通り、同地域では Bluetooth 対応の携帯電話が、北米地域に比べてはるかに売上げを伸ばしている。
  2. またあるコンサルティング会社の調査によると、Bluetooth 市場は2002年に手堅い成長を見せ、今後5年でさらに爆発的な普及が予想されるという。2002年の Bluetooth チップセット出荷数は、昨年の3倍を超す3380万個に達し、5年後にはそれすら比較にならないほど成長すると予測し、2007年のチップセット出荷数は11億個、売上高は25億4000万ドルに上ると見込まれている。Bluetooth の短期成長のカギを握るのは、携帯電話市場の発達だと見られている。2002年に出荷される Bluetooth デバイス2780万台のうち、約2/3を携帯電話が占めた。 あるアナリストによると、ほかにもいくつかの要因が今後の成長を後押しするという。一つには、Bluetooth 業界が Bluetooth 1.1規格の相互運用性に関する問題の多くを解決したことが挙げられる。二つ目は、チップセットの価格が数年前に Bluetooth 推進派の多くが望んだレベルまで下がり始めていること。チップセット価格は2002年中に7ドル前後、2003年には5ドルに下がり、その後も生産量の増加につれて下がっていくと予測している。また、携帯電話の売上げが減速し、Bluetooth チップの需要が当初の強気の予測に追いついていない現状についても、携帯電話の売上げはすぐに持ち直し、1998年や1999年のような猛烈なペースではないにしろ、成長に向かうと見ている。今後のBluetoothデバイス市場は、PDA、コードレスヘッドセット、ノートパソコンなどの出荷量が増えるにしたがい、多様化すると予測している。
  3. Bluetooth 2.0は2004年頃にアクセスポイント、ノートPC、PCカード、USBアダプタなどの製品に採用されると予想されている。
  4. 小型化、省電力化、低価格化という普及のための条件がそろいつつあることは明らかである。Microsoft社のWidowsXPでの標準サポート、携帯電話での第3世代の広帯域通信サービスの普及に伴い今後、かなりの規模で普及が広がることが予測される。

5. おわりに

 平成12年度から平成14年度の3年間に渡り、携帯端末技術とその動向を調査してきた。この間に,Bluetoothの爆発的な適用拡大は見られなかった。しかし最近ではカメラ付携帯電話が一般的になり始め、動画配信可能な携帯電話の普及、オフィスや家庭内での無線LANやBluetooth の適用が浸透し始めてきている。
なお、実験調査にご協力頂きました鞄立旭エレクトロニクス様、横河電機(株)様には心より深謝いたします。

 

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