石油学会会長メッセージ

武藤 潤

武藤 潤
(JXTGホールディングス(株)代表取締役副社長執行役員)


 石油産業に従事して35年になる。石油を取り巻く環境は大いに変わった。2度のオイルショックはあったものの経済は安定的に成長し、それを支える石油の需要は年々増加する時代が続いたが、今では毎年減少している。かつて日本の一次エネルギーに占める石油の割合は6割を超えていたが、天然ガスや新エネルギー等の増加で今は4割を下回り、今後も低下していく。当時、資源としての石油の寿命は「あと30年」といった枯渇が話題に上ることもあったが、技術の進歩とともに、採掘可能な油田の増加やシェールガスなど新たなソースの開発・利用が進み、最近ではあまり耳にしなくなった。
 では、この間、石油の重要性や石油への期待が変わったのだろうか? 「石油、天然ガスおよび石油化学工業に関する科学及び技術の進歩普及をはかり、産業の発達と文化の興隆に資することを目的とする。」 およそ60年前に書かれた石油学会の設立趣意書の内容である。あらためて読み返してみたが、古さは感じない。技術革新によって、石油の採掘可能な領域は広がり、天然ガスやシェールガスの利用、石炭やバイオマスの利用、物質の状態変化技術など石油技術を起点にして、生産・供給サイドは、確実に多様化・複雑化・高度化した。一方、使途サイドも燃料としてだけでなく、石油化学工業の原料として、効率的かつ効果的な生産・利用が追求・模索され、今日に至る。まさに、この数十年、石油は社会の発展を支え、石油学会も設立趣意書の目的に沿って、その役割を果たしてきた。
 今後、日本の石油需要は減少してゆくわけだが、石油の燃料や原料としての役割や技術の重要性が低下することはない。日本の石油需要は減少するが、まだまだ一次エネルギーの大宗を占めるし、世界全体では石油の需要は今後も増加する。これまで培ってきた技術を活用して、これから需要が増える国々へ貢献することも大切だ。また、設立趣意書に基づいて、より具体的な視点として、「持続可能な地球環境の維持を推進しながら、そして、安全と信頼性のレベルを向上しながら、生産から使途に至るまで、より効率的で効果的なプロセスを可能にする技術革新」がこれからも必要だ。それらはきわめて学際的で、多くの専門分野を融合した取り組みになる。他学会との協力・協業なども視野に入れて、技術革新を加速してゆかねばなるまい。石油学会の会長に就任するにあたって、1つの心配事は、学生や研究者などの石油に対する関心の度合いが低下傾向にあることだ。継続的な人材の育成と確保はこれからますます重要で、原点に立ち返って何をなすべきか、考えてみたい。