野口記念奨励賞

非遺伝子組換え酵母(Candida intermedia 4-6-4T2)によるセルロース系バイオマス糖化液からのエタノール生産に関する研究

 

齊藤 優 殿(コスモ石油(株)安全統括技術ユニット 中央研究所 主任研究員)

 地球温暖化対策としてバイオ燃料の導入は重要であり,食糧と競合しないセルロース系バイオマスからのエタノール生産に期待が高まっている。効率的なエタノール生産のためには,バイオマスの前処理工程で生成する発酵阻害物質の存在下で,グルコースとキシロースを高効率に変換する技術の開発が求められる。加えて,遺伝子組換え微生物の拡散防止の観点から,非組換え酵母の利用が望ましい。
 齊藤氏は工業規模への適性を見据え,育種により菌の開発を進め,セルロース系バイオマス糖化液からエタノールを効率的に生産可能な非遺伝子組換え酵母Candida intermedia 4-6-4T2株を取得した。
 具体的には,まず育種改良において,キシロースからのエタノール生産能力以外にも着眼し,発酵原料である糖化液に含まれる阻害物質である酢酸に着目した。800種以上の酵母株からのスクリーニング試験や発酵阻害物質存在下での馴養により繰り返し選抜を行うことで菌の開発を行い,発酵条件の検討を通してスケールアップ指標の設定と検証に取り組むことでエタノール生産技術を確立した。育種改良による菌株のエタノール生産性は高く,原料の前処理条件とリンクさせた性能検討や大量培養方法,さらにはプロセスのダウンストリームからのリサイクル使用の可能性などの実用化に向けた検討が進んでおり,当該酵母ならびにそれを用いた技術の完成度は高いと考えられる。工業化への展開を視野に入れての発酵条件の最適化も行っている。本研究によって見出された新たな非遺伝子組換え菌株およびその取り扱い技術は,将来のバイオ燃料の導入につながる応用展開の可能性もある。
 以上のことから,齊藤氏の研究業績は,本会野口記念賞表彰規程第2条2項に該当するものと認められる。

 

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