野口記念奨励賞

セルロース由来のオレフィン製造とそのガソリンへの適用に関する研究

 

奥山 泰世 殿(昭和シェル石油(株)中央研究所 研究員)
小池 充 殿(昭和シェル石油(株)中央研究所 研究員)

 カーボンニュートラルなバイオ燃料は,地球温暖化ガスの排出を抑制するためにその実用化が待たれている。とりわけ,食糧と競合しないバイオマスを原料とする次世代型燃料については,その開発に期待が寄せられている。現在,非可食系バイオ燃料で商用化に近い技術は,セルロースとヘミセルロースから得られる糖の発酵によるエタノール製造である。
 奥山氏および小池氏は,バイオリファイナリーの技術開発の一つとして,非可食系リグノセルロース系バイオマスから,ガソリン沸点範囲のC5およびC6オレフィンを製造する触媒変換プロセスの開発を行っている。そのプロセスは,第1ステップとして,Pt-Ir-ReOx/SiO2 触媒による水素化分解反応でセルロースからヘキサノールを選択的に生成させる。奥山氏らは,その触媒作用について,Ptサイトでバイオマス由来の糖アルコールの水相改質反応により水素が生成し,その水素がIr-ReOxサイトで糖アルコールの水素化分解反応を進行させてヘキサノールの生成に至る機構を提唱している。第2ステップとしては,HZSM-5などの固体酸触媒によりヘキサノールをヘキセンに転換する脱水反応である。
 一般に,セルロースからのガソリン成分の製造においては,分子中の酸素を除去する必要があり,炭素・酸素結合の水素化分解と脱水反応が重要となる。奥山氏らはこの課題に対して,Pt-Ir-ReOx/SiO2 触媒を用いることにより,ガス化や熱分解に比べて低い温度で,また水相改質/縮合と比べて少ない水素消費量で反応が進行することを明らかにした。この研究結果は,天然ガスなど化石燃料に由来する水素(外部水素)の消費削減を図ることも可能なことから環境価値も高いと言える。
 以上のことから,奥山氏および小池氏の研究業績は,本会野口記念賞表彰規程第2条2項に該当するものと認められる。

 

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