学会賞(表彰規程第3条1項に該当するもの)[工業的]

固体酸化物形燃料電池(SOFC)ハイブリッドシステムの開発と実用化

 

三菱日立パワーシステムズ株式会社 殿

 固体酸化物形燃料電池(SOFC: Solid Oxide Fuel Cell)は約700 ℃以上の高温で動作する燃料電池であり,他の燃料電池と比べ高い発電端効率が期待できる。また,高温の排熱を使ってガスタービン(GT: Gas Turbine)を動作させ,複合発電システムとすることで,原理的には非常に高いシステム効率が可能となり,二酸化炭素排出量の削減による地球温暖化問題の改善につながる。しかし,システムとして実用化するためには劣化を抑制しつつ,高効率かつ長期安定性が必要であり,メンテナンス性の向上や設置面積の低減など,多くの技術課題を要素技術によって克服するとともに,各技術が全体として調和した複合システムとしての完成度を上げることが求められる。したがって,世界の複数の企業がこれまで開発に取り組んできたものの,実用化には至っていなかった。
 三菱日立パワーシステムズ(株)(MHPS)は,1983年よりモジュールを加圧容器によって加圧運転するSOFCとGTを連接した複合発電システムの開発に取り組み,上述したような数々の課題を独自の技術開発によって克服してきた。SOFCは加圧することによって開回路電圧の向上,反応過電圧の低減を図った。また,空気極と電解質の間にSDC(Sm Doped Ceria)中間層を設置することで固相拡散による劣化の抑制,空気極の触媒燃焼による高い起動性と温度制御性による安定性・信頼性を向上させた。さらに,複数のセルスタックを束ねてカートリッジとし,そのカートリッジを複数並べたSOFCモジュールを圧力容器に格納する構造とすることで,メンテナンス性の向上と設置の省スペース化が実現されるなど,多くの技術課題が克服されてきた。
 MHPSはこれらの技術開発の結果,SOFC複合発電システムの第一ステップとして,SOFCとマイクロガスタービンを組み合わせたシステム(ハイブリッドシステム)を納入し,2015年5月に運転を開始,10,000時間を超える耐久性を実証している。さらに,2017年には,その成果を反映した250 kW級の実証機を国内4カ所に設置し,実負荷環境における起動停止試験や負荷変化試験などを行い,安定して稼働できることを実証した。これらの成果を受けて, MHPSは業務・産業用ハイブリッドシステムの販売を2017年8月に開始した。
 以上の成果は,SOFCハイブリッドシステムを初めて実用化したものであり,天然ガスの有効活用によるエネルギーセキュリティの確保と低炭素社会の実現を両立させうる技術の企業プロジェクトとして世界的にも広く知られている。これらの研究開発と実績に基づき,理論的には75 %-LHVの高いシステム効率が期待できるSOFC/GT/水蒸気タービンのトリプルコンバインドシステムの開発という,さらなる高効率化への挑戦を続けていて,エネルギー分野全体における貢献も高い。
 よって,本業績は本会表彰規程第3条2項に該当するものと認められる。

 

表彰平成29年度表彰受賞者一覧|ページへ