論文賞

酸化チタン薄膜で被覆した酸化カルシウム高活性塩基触媒の合成

 

松橋 博美 殿, 船木 大地 殿*1
(北海道教育大学函館校化学教室)
(上記所属は論文発表時のものです)

 酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属酸化物は,アルドール反応等の炭素‐炭素結合生成反応をはじめとするファインケミカルズ合成反応用の典型的な塩基性触媒として使用される。しかし,空気中の二酸化炭素や水が触媒毒となるため,通常,真空下や不活性ガス中で反応を実施しなければならないことや,種々の極性溶媒に溶解してしまうことが,アルカリ土類金属酸化物を固体塩基触媒として使用する上での課題であり,これらの課題を解決する触媒調製法が強く望まれている。 松橋氏らは,酸化マグネシウムの表面をシリカ,アルミナ,酸化チタン,ジルコニアなどで被覆することによりこれらの問題を克服し,本調製法が酸化マグネシウムより塩基性の強い酸化カルシウムにも適用可能であることを既に見出している。本論文は,これら一連の触媒種のうち,ジアセトンアルコールのレトロアルドール反応によるアセトン合成に最も高活性を示した,酸化チタン薄膜で被覆した酸化カルシウム塩基触媒 (TiO2/CaO) について,詳細な解析を実施したものである。まず著者らは,種々のチタン含有量と焼成温度の異なる触媒で活性評価を行い,773 Kで焼成した10 mol% TiO2/CaO触媒が上記反応において299 Kで最も高活性であることを示した。それに続き,TG-DTAおよびXRDにより,触媒調製過程におけるチタン種,カルシウム種の変化について詳細な解析を行い,炭酸カルシウムやチタン酸カルシウムの生成が活性に大きく影響することを見出し,上記調製条件での触媒が最も高活性である理由を明確にした。 さらに松橋氏らは,TiO2/CaO触媒の再利用性についても検討し,ジアセトンアルコールに5 wt%の水を加えた原料では上記反応に対し徐々に活性を失うものの,アセトンで洗浄することにより触媒活性が回復することを見出している。また,キレート剤を使った試験等によって,酸化チタン被覆触媒では溶媒中へCaイオンが溶出しないことを確認している。 以上のように,本研究で得られた知見は固体塩基触媒によるファインケミカルズ合成を工業的に実施する上で非常に重要であり,この分野の発展に大きく貢献するものである。よって,本論文は本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。
[対象論文] J. Jpn. Petrol. Inst., 59, (1), 24 (2016).
[現所属] *1 (株)北海道銀行

 

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