国際技術交流賞

脱れき油混合処理のための減圧軽油水素化分解触媒の開発と実用化

Development and Commercialization of Hydrocracking Catalyst for Heavy Oil Mixed with Deasphalted Oil

 

Saudi Arabian Oil Company 殿
日揮触媒化成株式会社 殿

 サウジアラビアの国営石油会社サウジアラビアンオイルカンパニー(以下,アラムコ)では,製油所の経済性向上のために脱れき油(以下,DAO)を減圧軽油等と混合して水素化分解するなどの原料油の重質化対応を進めてきたが,既存の水素化分解触媒では十分な性能が得られなかった。そこで,アラムコの研究開発部門は,触媒の高性能化と高寿命化を目標に,2007年より財団法人国際石油交流センターの補助事業として,日本の日揮触媒化成株式会社(以下,触媒化成)と共同研究を開始した。
 水素化分解触媒には高い分解活性と中間留分選択性が求められる。特に原料油中に含まれる重質なDAOを分解でき,窒素化合物等に対する耐被毒性の高い触媒を開発するためには,細孔分布や活性点など触媒自身の改良技術が必要となる。本研究開発では,工業触媒メーカーである触媒化成とプラントユーザーであるアラムコとが緊密に連携しながら開発を進めた。具体的には触媒化成ではゼオライトの水熱処理条件などの製造技術の見直しによる細孔構造の最適化と,チタンとジルコニウム成分を担持させるための金属溶液処理による活性点の質の改善を行うことによって,DAO混合油に対しても高い分解活性,中間留分選択性,耐被毒性を併せ持つ触媒の開発に成功した。また,アラムコでは試作触媒を実装置へ適用するための評価試験を実施した後,2014年からはプロセスライセンサーの協力も得て,新規水素化分解触媒の実装置での実証試験を行い,優れた性能を確認した。
 両社はこれらの研究開発成果に関して,海外の学会で研究発表を5件行っており,また特許については国際出願3件を行っており,このうち米国特許は既に登録されている。さらに,新触媒は重質油であるDAO処理に高い性能を有することから,製油所の経済性だけでなく環境適合性を上げる効果ももたらした。これら一連の研究開発は,産油国企業であるアラムコの触媒開発技術の向上に大きく貢献したと言える。
 本業績を総括すると,アラムコと触媒化成が共同で開発した脱れき油混合処理のための新規水素化分解触媒は,水素化分解装置のライセンサーにより優れた性能が確認され,アラムコのリヤド製油所の実装置に採用されている。よって,本件は本会国際交流賞表彰規程第2条1項に該当するものと認められる。

 

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